人間は心の中に退治すべき「竜」を抱えている

A
アーサー王伝説や中世の騎士物語に出てくる竜の話には子供の頃、とても強い印象を受けました。
B
ヨーロッパでの竜は「貪欲さ」の象徴です、竜は何でもかんでも自分のところに取っておこうとします ―洞穴に宝物を入れて守ってるんです。宝物は例えば乙女や、黄金の山です。そのどちらも竜にとっては、どうしたらいいか分からないものだし、役に立たないものです。それなのにただ持っていたくて、番をしているんです。
B
心理学的に言うと、竜は「ひとを自我に縛り付けているもの」を表します。人間は、自らの竜という檻の中に囚われているのです。精神科医の課題は、その心の内なる竜を退治することです。束縛を解いて、より広い人間関係が持てるようにするんです。分析心理学の創始者ユングの所に来た患者で、孤独感を訴える女性がいました。自分の気持ちを絵にするように言われた彼女は、風の吹きすさぶ海辺で自分が岩に囚われている絵を描きました。腰から下が岩に埋まっていて、生命力の象徴である黄金は、すべて岩の中に閉じ込められていました。
B
しかし、カール・グスタフ・ユングと話し合った後に描いた絵には、彼の言葉の影響が見られました。その絵では、突然のイナズマが岩を一撃しています。そして黄金があふれ出しているんです。もう岩の中に閉じ込められた黄金はなく、岩の表面のあちこちに出てきています。ユングが彼女と話し合った結果、その表面に出てきた黄金の正体が分かりました。

それは彼女の友だちだったんです。

彼女は孤独だったわけではなく、自分を小さな世界に閉じ込めていただけで、本当は友だちがいたんです。分かりますか、これが竜退治です。恐れのように、「人を押さえつけているもの」が竜なんです。少なくともヨーロッパの竜はそうです。

B
中国の竜はまた違いますね。中国の竜は、水と生命力を表します。竜は腹を叩いて「はっはっはっ」と言いながら現れます。それは水などの恵みをもたらす、偉大な輝かしい存在です。でも西洋の竜は、人をダメにする、良くないものです。
A
ということは、もしそこに竜がいたら、それは……
B
真の竜は、心の中にいます。それは人を押さえつける自我です。
A
自我とは何ですか?
B
自分が望むもの、信じているもの、自分が出来ること、自分が愛していると思っているもの、また自分が人生の目的とみなしているもの、などです。それが小さすぎると、人を束縛します。それが竜なんです。またもし自我が、周囲の言うがままになっているようなら、それは間違いなく人を束縛します。自分を取り巻く環境が、「竜」になっているんです。
A
一体どうすれば竜を退治できますか? 先生は「魂の高度な冒険をしなさい」と言われますが、それはどういうことですか?
B
私がいつも学生たちに言うのは、「自分にとっての真の喜びを追求しなさい」ということです。無上の喜びを、恐れずに追い求めるんです。
A
それは一生の愛でしょうか?仕事でしょうか?
B
人生そのものでしょう。もしそれが好きで選んだ仕事なら、この上なく幸せと言えるでしょう。でももし「こんなことはとても出来ない」と思いながらやっているなら、その仕事は人を束縛する竜です。「ああ自分にはとても無理だ、誰それのようにはできない」なんて思うならね。
A
英雄は世界を救うために、私たちは自分を救うために旅をするんですね?
B
自分を救うことで、世界も救うんです。人間に活力が出てくれば、世界も活気づく。それは間違いありません。世界を変えるには、その仕組みや法則を変えることだと思っている人がいますが、そうではありません。世界は生きていなければいけません。世界に命を与えるには、ひとりひとりの人間が、自分の人生を見つけて、活力を持って生きることだと、私は思います。
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