神話の力(ジョーゼフ・キャンベル)自分の心の声を聞く方法って?

A
「体制をどう変えれば、私たちが支配されずに済むのか?」という疑問を解くのに、英雄たちの行動は参考になりますか?
B
「体制を変える参考」になるとは思いませんが、「体制の中で生きていく参考」にはなるでしょう。ダースベイダーの誘いをはねつけたルークの在り方は、不当な圧力には抵抗すべきだということを教えてくれます。もしある人が、自分の心からのリクエストに耳を傾けず、世の中の習慣に迎合しているなら、その人は自分を崩壊させてしまう危険を冒しています。
B
そういう人は、自分の肉体が全く望んでいない生き方に、自分を合わせているんです。世の中には、自分の心の声を聞くのを止めてしまった人たちがあふれています。私の人生でも体制に迎合して、その要求に従おうと思えばできる機会は何度もありました。でも私は独立独歩の一匹狼です、決して降参しませんでした。
A
おそらく英雄は、誰の中にも潜んでいるんでしょうね?
B
そういうことです、私たちは生きていくうちに、それまで知らなかった自分を発見します。あるきっかけで新しい領域に入り込み、自分が試されることもあります。イロコイ・インディアンの伝説をお話ししましょう。インディアンの話にはしばしば出てくる話のモチーフがあって、私はそれを「求婚者の拒絶」と呼んでいます。そこから冒険が始まるんです。

ある娘と母親が、村はずれの小屋に住んでいました。娘はとても綺麗でしたが、ひどく気位が高くて、村の若者からの求婚をことごとくはねつけていたので、母親はすっかり手を焼いていました。

ある日、ふたりは焚き木を集めに遠く離れた森へ行きました。焚き木を集めていると、そこへ不気味な暗がりが突然襲ってきます。それは日が暮れたからではありません、そういう暗がりは、どこかに潜む魔法使いの仕業なんです。そこで母親は言います、「さあ木の皮を集めて、小屋を作りましょう。それから焚き木を集めて火を起こすのよ、今夜はここで夜を明かしましょう」そして母親は眠ってしまいました。

娘がふと顔を上げると、目の前に大変立派な若者が立っていました。美しい飾りの付いた帯や、見事な羽根を身に付けています。彼は言います、「あなたと結婚しようと思って来ました、返事を聞かせてください」娘は承諾し、母親も承知しました。若者は真剣であることの証に、自分の帯を母親に贈りました。そして彼は娘を連れて行きます。普通の男では不満だった娘も、今度は納得したわけです。でも、そこが運命の分かれ道です。ここから奇妙な冒険が始まります

娘は若者に連れられ、彼の村に行きます。村の人々に歓迎され、娘はとても満足でした。翌日、彼は「狩りに行ってくる」と言って出かけていきました。ところが彼が入り口の戸を閉めたあと、外から奇妙な音がしたんです。娘は丸一日、小屋の中に一人でいました。

夕方になると、また朝と同じ奇妙な音が聞こえてきました。すると戸がサッと開いて、大きなヘビが舌をチラつかせながら入ってきました。そして娘のヒザに頭を乗せ、「頭のシラミを取ってくれ」と言うのです。そのゾッとするような蟲を娘が全部取ってやると、ヘビはひきあげて行き戸が閉まりました。と思ったら、すぐまた戸が開き、あの素晴らしい若者が入ってきました、そして言います「さっき俺が入ってきたとき、恐かったかい?」といい、娘は「いいえ、ちっとも」と答えました。

翌日も彼は狩りに出かけます、娘が焚き木を集めに外に出かけると、先ず目に入ったのは岩の上でとぐろを巻いている大蛇でした。見回すとあちらにも一匹、あちらにもまた一匹、娘は気味が悪くなって、もといた家が恋しくなりました。夕方になるとまたヘビが現れ、次に男が現れました。

3日目彼が出かけると、娘はここから出て行こうと決心します。娘が小屋を出て、森の中で考えていると話しかける声がします。振り向くと小柄な老人がいて、彼女にこう言います、「娘さん、困ったことになったね。お前が結婚した男は7人兄弟の長男で、あいつらはみんな恐ろしい魔法使いだ。魔法使いは心臓を体の中に持っておらん奴が多いが、あの7人もそうだ。7人の心臓を入れてある袋が、お前の結婚した男の寝床の下に隠してある、それを持ち出しなさい」

娘は小屋で心臓の入った袋を見つけると、それを持って逃げ出しました。後ろから「止まれ」と声がします、魔法使いの声です、「逃げようとしても、そうはいかないぞ」と。そのとき老人の声が聞こえます「私が助けてあげよう」老人は、彼女を水の中から引き揚げます、娘は自分が水の中にいることすら知りませんでした。

A
それはどういうことですか?
B
彼女が合理的な意識の領域を離れて、無意識の領域に入り込んでいたということです。娘は魔法使いと結婚したことで、超現実的な世界へ飛び込みました。そこで地の底の邪悪な力に捕らえられたところを、上からの善い力に救われたんです。結婚によって彼女は、狭い世界を出て、新しい世界に入る冒険をした。そこは自分の知識を超えた力が支配する領域です、大きな危険を伴う世界なんです。
B
ですからその冒険は、「とんだ災難」に終ることもあります。しかしそこで救いの声が聞こえるかも知れない、そしてその冒険から新しい人生が開けるかもしれないんです。知ることの出来るものと、絶対に分からないものとの境界を表現しているんです。人生には、人間の探究を超越した神秘があります。人生とは何か?……それは大きな謎なんです。
A
そのことを神話が教えてくれるわけですか?
B
そういうことです。人生の神秘、自分自身の神秘を知ることは、生きていく上で大切だと思います。それは人生に新たな喜びを与えますし、新たな均衡や新たな調和を与えてくれます。心理療法では、患者は「自分の中で動いている歯車は何なのか」を見つけることで、軌道修正をします。それと同じように、人生とは何かを神話を通して考えることは人間を助けてきたと思います。
A
どういうふうに助けるんですか?
B
神話を通して人生を考えることは、私たちの不安を打ち消してくれます。それは人生の避けがたい苦しみや悲しみと、何とか折り合って生きていくのを助けてくれるのです。それからマイナスと思われる物事にも、プラスの面があることを教えてくれます。例えヘビに出くわすことになっても、新しい世界に踏み出すことにはプラスの面もあるのです。
A
それもまた冒険なわけですね?
B
そう、人生という冒険です。
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